産経新聞が高齢の親と中高年のひきこもる子の現状を取り上げた連載「8050の実像 中高年ひきこもり61万人」(5月14〜16日付朝刊)の掲載後、読者から相談先に悩むお便りが複数寄せられた。
自宅にひきこもってきた当事者や家族はどこに助けを求めればいいのか。専門家に聞いた。
〈誰にどのように相談すればいいか、何か福祉の助けはないのか〉
〈相談に行ったが、誠意を持って受け止めてくれる所はなかった〉
中高年のひきこもりの当事者を家族に持つ読者から寄せられたお便りには、支援の求め先が分からないまま、耐え続けてきた苦悩がつづられていた。

宮崎大学教育学部の境泉洋准教授(臨床心理学)は「まずは全国にある『ひきこもり地域支援センター』の窓口相談すること」と話す。
支援センターは、厚生労働省の「ひきこもり対策推進事業」の一環で、各都道府県の精神保健福祉センターなどが運営する。
社会福祉士や精神保健福祉士らを相談員として配置。家族からの相談や家庭訪問を通じて当事者らに支援を行うほか、ケースによっては自治体や福祉事務所、医療機関など関係機関へと引き継ぎ、包括的な支援につなげる。

例えば京都市では平成25年から、支援センターとして「こころの健康増進センター」内に、40歳以上のひきこもりの子を持つ親などからの相談窓口を設置。
電話での相談の後、必要に応じて面談を行なったり、就労支援窓口などにつないだりする。
30年度は延べ186件(電話相談は同90件)の面談を行い、他機関につなぐなどしてきた。
ただ、支援センターは原則、各都道府県や政令指定都市に数カ所あるだけで、遠隔地からは継続的に相談に行きづらい場合もある。
そうした地域の受け皿になっているのが、市町村の「生活困窮者自立支援制度」の相談窓口だ。

民間の支援団体もある。特定NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」は、全国で加盟団体が活動。ひきこもり当事者の家族同士をつなぎ、悩みを共有して心の負担を軽くしたり、支援制度情報を交換したりする役割を果たす。
境准教授は「公的機関は運営基盤がしっかりしており、民間団体は同じ担当者が継続的に当事者の目線で支援を行うことができる。それぞれが連携して足りない部分は補いながら、ひきこもりの当事者や家族を支援することが必要だ」と話している。

産経新聞 令和元年(2019)6月1日付朝刊
《ひきこもり「地域支援センター」に相談を》