『伝書鳩』という、鳩に手紙を託して目的地に飛ばす職務があります。
東京タワーが完成した翌年の 昭和34年(1959年)まで、共同通信社では『伝書鳩』が活躍していました。
社屋の屋上で飼育していた20羽の伝書鳩は、迷子や猛禽類に襲われることを想定して、5羽1組で飛ばしていたそうです。
当時、新聞社が集中していた、有楽町・日比谷界隈の新聞社の屋上にも鳩小屋があったそうで、社屋の周囲は鳩の糞害が深刻だったことも伝わっています。
5羽の鳩に手紙を装着して飛ばす人
鳩の到着を待って手紙を受け取る人
餌を与え、清掃する人
そんな地道な毎日の連続があって
「情報発信・情報収集」というシステムが形成され、今日のSNS普及に貢献してきたのだと想像します。
そして私は、新聞社の社屋で鳩を飼育していたことを微笑ましく思うと同時に、「鳩が手紙を運ぶ」ということについて、なんと不確かでリスクが大きい手段だったのかと心底驚くのです。
しかし、この「不確かさ」も、私は『伝書鳩』の魅力なのかなとも思います。
私達は「不確かさ」を警戒するからこそ、「正確」であることの貴重さを知ることができるのです。
タロットにも
『情報発信・情報収集』という、『飛脚』を意味する札があります。
目的地まで人や馬を走らせ、一刻も早く主君に「知らせ」を届ける役割で、ときに敵と対峙することもある、まさに命懸けの職務です。
届かなかった「知らせ」のために、国が滅びる事態を招くこともありました。
また、届いた「知らせ」が故意に偽りの情報で、混乱を招くこともありました。
私は、この『情報発信・情報収集』という札を手にするたびに『伝書鳩』を思い出すのです。
現代ではSNSの普及で、言葉を瞬時に相手に送ることもでき、多くの人と共有できる時代になりました。
私達は、SNSの多大な恩恵を授かるとともに、言葉を発信することの貴重さを忘れがちではないでしょうか。
今、あなたが相手に送ろうとしているLINEのメッセージは『伝書鳩』にお願いするほど大切なものかを、今一度 読み返していただきたいのです。
デマ・ゴシップ・噂話
根拠のない憶測
撹乱情報
など、タロットでは危険な情報として処理します。
人物像では、現代風に解釈すると
スパイ
機密工作員
情報将校
という業種になります。
そういった意味では、タロットが創作された700年前から、
他者のゴシップ等は
娯楽性
集客力
利益を生み
情報操作がしやすかったのだと思われます。
それを戒めるために『飛脚』の札の側面として「不確かさ」を警戒する意味が込められているのだと私は考えます。
あなたが今、送ろうとしているメッセージ。
あなたが「スパイ・機密工作員・情報将校」になる必要はありません。
あなたのメッセージが
なにかを滅ぼす事態を招くなら、それに加担しそうな予感がするなら、スマホは今夜一晩だけでも寝かしてみてください。『伝書鳩』は、夜は飛べないのです。
滅ぼしそうになったものは
「信頼」
だと、翌朝気づくことができるでしょう。
そして、「信頼」を守りぬいたとき、自分を誇れる爽快感を味わうことができるでしょう。
私は、何度も『伝書鳩』に救われました。
スマホを手にしたとき、あなたも『伝書鳩』をイメージしていただけたら幸いです。
東京タワー 正式名称:日本電波塔 1958.12.23竣工
写真:共同通信社