「3人揃ってこういうことをやる日が来ることは、正直、想像してなかったものね」
:細野晴臣
2007年5月18日、六本木のライヴ・ハウス”スーパー・デラックス”で「STOP-ROKKASHO」の1周年記念イベントが行われた。ここで発表されたのが「NO NUKES MORE TREES」と法人『モア・トゥリーズ』の立ち上げだった。
イベントは音楽とトークを中心に、さまざまな文化人、音楽家が登場した。
坂本龍一はイベントの共同開催者である桑原茂一との対談で、この当時の気持ちをこう述べている。
「“非戦”という言葉は、いまではけっこう当たり前のものになりつつありますけど、実は、ぼくたちがあの言葉を作ったとき、すごく考えたんですよ。それまでは“反戦”しかなかったでしょ。“反戦”っていうと、やっぱり拳を振り上げているイメージがあるじゃないですか。でも、それってちがうよなって、2001年の9・11以降を考えたときに感じたんです」
「NO NUKES MORE TREES」も同様に、再処理工場の稼働のストップを訴えるが、もっとポジティヴな要素も付け加えたいとの考えだった。
そこで浮かんできたのが”NO NUKES MORE TREES”というテーマなんです。核の代わりに木をエネルギー源にしようってことじゃなく、木に象徴される自然を育てようと。木というものは、生態系の一部であり、生きることの象徴としての木。核じゃなくて、そんな木を育てようという言葉が浮かんだんです。で、ぱっと論理的にわかりやすいフレーズじゃないところもいいかなって。このフレーズを聞いたとき、核の対比になぜ木が出てくるの?って、ひっかかりが生まれると思うんですよ。いろんな想像をしてもらえるんじゃないかなって」
:坂本龍一
この対談には途中からサプライズ・ゲストが加わった。法人『モア・トゥリーズ』の発起人に加わった細野晴臣と高橋幸宏だった。
桑原茂一が「こういう趣旨の場にYMOの3人が揃うのは一種の驚きだ」という発言をすると、YMOの3人もそれには大きく同意のようだった。
写真:六本木スーパーデラックスにて。
左から 坂本龍一・桑原茂一・細野晴臣・高橋幸宏・吉村栄一
撮影:沖本アキラ
『YMO1978-2043』
2021年3月12日 初版発行
著者:吉村栄一
発行者:青柳昌行
発行:株式会社KADOKAWA
◆このイベントは、HASYMOチャリティコンサート(小児がんの子供とその親への支援を目的とした“スマイル・トゥギャザー・プロジェクト”/パシフィコ横浜)の前日に行われました。