『ウェイト版』タロット誕生に多くの影響を与えてイングランドの宮廷。
16世紀の宮廷は政治の場所でもあり、所属する派閥によって、家臣や侍女らの立場が安定したり揺らいだりする時代でした。

家臣や侍女らは、仕えている派閥の主人が「優勢であるか」「劣勢であるか」時流を読み取ることが求められました。

しかし、一流の宮廷人である派閥の主人たちの立ち振る舞いは、常に優雅で洗練されていました。
家臣や侍女らは、「誰がが優勢で、誰が劣勢か?」読み取ることは困難だったと伝えられています。

まだ何も手に入れていない時期から、「宮廷の半分は私のものだ」という風に振る舞う主人もいました。
失脚後の幽閉された湿地帯で「何もない場所に、薔薇の庭園がある」かのように振る舞った主人もいました。

どんなに不安で、どんなに焦燥感に駆られても、感情をコントロールしてエレガントに振る舞う精神力。
不愉快な感情を克服する精神力。
「劣勢なときこそ、エレガントに振る舞う」
これが宮廷人としてのマナーでした。
エレガントさを習得するためには、一朝一夕では獲得できない修行が必要でした。
まさに、王や王妃に相応しい者にしかできない所作なのかもしれません。