【 タロット ガーデン 】
ニキ・ド・サンファル(本名:カトリーヌ・マリー=アニエス・ファル・ド・サンファル)1930-2002は、戦後を代表する美術家のひとりです。
1961年、絵の具を入れた缶やオブジェを石膏で付着させた画面に銃を放つことで完成させる「射撃絵画」を発表し、一躍その名が知られることになります。
少女時代に体験した家父長制度などの矛盾に対する怒りを、射撃絵画という過激な手法で解放しました。
その後、ニキには
「女とは何か、私とは何か。」という問いかけが残り、
それが女の役割を見直し、女を直視する作品
「花嫁」「娼婦」「妊娠」「出産」などの作品になってゆきます。
ニキとタロットカードの出会いは1960年代。
精神的に落ち込んでいる時、自分を勇気づけ助けてくれるものとして、
ニキはタロットを読み始めました。
しかし、あまりにもよく当たるので
「タロットに支配されているのではないか」と、その力に驚き、
生涯をかける作品創りに向かわせました。
ニキは
「タロットカードは私の友であり、肌身離さず持ち歩き、
常に見ています。
これまでひどい鬱状態に陥った時は、
アーティストとしての仕事が治療として大きな役割を果たしてきました。
タロットは世界や人生の問題を理解するのに必要なもの。
また、困難をひとつひとつ克服しながらハードルを乗り越えれば、
最後はパラダイスに到達できると考えられたのは、一番の手助けになった。
タロットは私にとって道であり、
人間はその道を行く旅人なのです。」
と、語っています。
タロットカードをテーマにし、
そこで不幸だった少女時代まで遡り、未来も含めて自分の幸せを願うため、
自身の理想郷を彫刻公園で実現させました。
タロットカードの大アルカナ22枚の巨大彫刻群の、
その中の幾つかは居住可能となっています。
鋼鉄の枠組みにセメントを固めて作られ、
モザイク、鏡、ガラス、陶器で装飾を施されており、
ニキの終生の癒しと安らぎの場所となりました。
ニキの繊細かつ大胆な作品。
愛する人に宛てた絵手紙。
生涯をかけて創作した広大な【タロットガーデン】。
私は、ニキの膨大な作品群を拝見し、
悲しみ、痛み、喜び、高揚感、怒り、失望…
彼女のありとあらゆる感情を感じ取りました。
しかし、ニキは
「ただ、愛している。」
この想いだけが
創作のエネルギーになっていたのではないかとも感じました。
誰かを想い
それを生きるエネルギーに変える。
その情熱は私達の中にも宿っているのではないでしょうか。
【 ニキ・ド・サンファル 展 】
2015.9.18-12.14
国立新美術館
公式ホームページ http://www.niki2015.jp/
ぜひ、ニキの作品をご覧き、
ご自身の情熱の元が何なのかを感じていただけたら幸いです。