《 嫌われないようにではなく、悲しませないように 》
この言葉の意味を理解するまで、私はとても長い時間を必要としました。
この言葉は、中世フランス宮廷で創作されたタロットがイングランドに渡り、《宮廷恋愛》のマナーとして伝承されたメッセージのひとつだと私は想像しています。
《宮廷恋愛》とは、家柄のそれほど高くない若い独身男性が、身分の高い伯爵夫人などの既婚者を相手に、詩や音楽・贈り物を駆使して恋に導く仮想恋愛です。
実際には、伯爵夫人に注視してもらうことで、その創意工夫・センス・技術・情熱度を推しはかってもらい、出世を優位に運んでもらうためのプレゼンテーションが目的だったと思われます。
《 嫌われないようにではなく、悲しませないように 》とは
「必死さをみせずに、いかにスマートに余裕をもって振る舞うか」を、恋愛のマナーとして指南されてきたものかもしれません。
これを現代風に解釈しても、普遍的な恋愛のかたちが見えてきます。
私が20代の頃の恋愛に対するスタンスを回想すると
恋を絶対に失敗してはならない試験のように感じ
《嫌われないように》
意見をしたくても我慢したり
体調がよくないときでも笑顔を絶やさず
着たい洋服より好感度の高いファッションを選んだり
相手の興味あるジャンルの音楽を聴いたり
いつコールするかわからない固定電話の前でスタンバイしたり
連絡がつかないまま 待ちあわせ場所で2時間待ったり
一所懸命を通り越して必死だった姿が思い出されます。
しかし、タロットを読みはじめて
《 嫌われないようにではなく、悲しませないように 》というメッセージの札に出会い、この言葉の真意を10年近く考え、悩んだ末に見つけた答えは『恋愛はふたりが対等』であるということ。
「そんなことは当たり前」と今なら言えるのですが
かつての私のように
恋愛をある種の自己犠牲と思っているとき
恋愛に社会的ステータスや学歴が介在したとき、『ふたりが対等』であるとは、とても難しく思えたのが正直な気持ちです。
《嫌われないように》とは、自分のことを後回しにする必死な姿。
《悲しませないように》とは、相手のことを想像できる余裕ある姿。
例えば
彼が買ってくれた期間限定のハーゲンダッツのアイスクリーム。
彼があなたを喜ばせようとしてくれたことが想像できたなら
「これを買うために、コンビニを何軒まわってくれたの?」
「30分もかけて探してくれたんだね?」
「溶けないように、赤信号で停まるたびにヒヤヒヤしたよね?」
と、彼があなたにしてくれたことを感じたまま言葉にして、「美味しいね」と幸せな姿をみせるだけでいいのです。
「自分の力で、この人を幸せにしている」と感じたとき、人は去ってゆきません。
あなたにとってハーゲンダッツよりも重大なことがあり、アイスクリームをスルーして
「昨日の飲み会のメンバー全員教えて?」
「どうして最近会える時間が少ないの?」
「どうしてLINEの既読無視するの?スタンプくらい送って」
「どうして誕生日を一緒に過ごせないの?」
と、彼のしてくれたことを想像できる余裕がなかったとします。
幸せそうでない様子の人を前にして、人が感じるのは無力感です。
「自分の力で、もう、この人を幸せにできない」と感じたとき人は去ってゆきます。
もし、彼があなたの質問に丁寧に答えてくれたとしても、積極的に答えたいと思える内容でなければ義務感で「やらされている」という不快は拭えません。
ふたりが対等であるときの恋愛に対するスタンスは
私はあなたを尊重しましょうと想像できる余裕。
「彼はみんなの人気者なんだろうな」
「休みの日くらい一日中家で寝てたいよね」
「既読は了解」
「イベントごとには興味ない人なのね」
と想像できる余裕があるときには、彼を
《悲しませないように》
あなたの気持ちも行動もスマートです。
それでもあなたが
「幸せではないのに幸せそうな笑顔なんてできない」と思うなら
この恋愛自体を根本的に考え直すか
あなたの幸せの基準値がどこにあるのか内省する時期なのかもしれません。
「ハーゲンダッツくらいでは満足できない」と感じる理由がどこかにあるはずです。
それは
「女友達の恋人と比較する」
「彼の金銭感覚に普段から疑問を抱いている」
「そもそも私はセカンドなので、ご機嫌取りにしか思えない」
「元カレは沖縄からブルーシールアイスをお取り寄せしてくれた」など
あなたが無意識に彼をジャッジしている可能性があります。
ジャッジしているものが何かわからないうちは、いつまでたっても同じテーマの課題がやってきます。
あなたが今の恋愛に満たされていないと感じているなら、無意識にジャッジしているものを可視化できるタロットで 確認する機会にしていただけたら幸いです。
恋愛は、どちらか一方が頑張って維持するものではなく、あなたと彼は対等です。
「彼のために自分のことを後回しにしているな…」と思うとき
「彼のことを想像できる余裕がなくなってるな…」と感じるとき
《 嫌われないようにではなく、悲しませないように 》
この言葉を思い出していただきたいのです。
あなたはただ
幸せな姿をみせるだけ。
それだけで誰かが幸せになれる。
誰かの幸せが自分の幸せだと感じる
そんな瞬間に気づける恋愛でありますように。