『ブラック・ジャック』第34話「目撃者」あらすじ

何者かが新幹線のホームに置いた時限爆弾爆発により、多数の死傷者がでる大規模テロ事件が発生しました。
犯人の一連の行動をみていた、唯一の目撃者である売店の女性店員は、爆発の衝撃によって両目を失明してしまいます。
警察は、容疑者らの「面通し」に協力してもらうために、「唯一の目撃者である、女性店員の目を治す手術をしてほしい」とブラック・ジャックに依頼します。

しかし、過去に同様の手術をおこなった際、視力が「5分間しか回復しなかった」前例があるためブラック・ジャックは手術の依頼を断ります。
「医師ってのは警部さん。
ひとをなおすために手術をやるんだ。
5分たってどうせ失敗するとわかってる手術をわざわざやるバカがいますかね。
患者だってぬか喜びですよ‼︎
ごめんですね」
「患者がかわいそうだよ。
2度も(失明の)くるしみをあじわうなんて」
と、医師としての見解を述べます。

それでも、大規模テロ事件の犯人を、なんとしても検挙したい警察は「その5分が必要なんです」と、捜査費用の3,000万円を全て手術費用に投じても構わないと説得しました。
ブラック・ジャックは3,000万円という金額にあるプランをひらめかせ、手術を了承します。

手術が終了し、女性店員は手術台に寝たまま、包帯のすきまから片方の目だけで容疑者らを確認して、犯人を無事に特定しました。
拘留され連行される犯人を見送ったあと、女性店員はブラック・ジャックに話しかけます。

「おねがい。
また見えなくなるまでに
せめて外のけしきをみたいんです」

女性店員の希望を叶えるために、彼女のベッドを窓のそばへ移動するブラッ・クジャック。窓の外には、いつもと変わらぬ街の風景が広がっています。

「……きれいね。景色って…
あたし、一生忘れないわ…」
彼女は限られた5分間で
目のみえることの尊さを一生忘れないと、自分に誓うのです。

その後、警部に「3,000万円は彼女にやってください。約束ですぜ」
と言い残して消えるブラックジャックの姿がありました。

『ブラック・ジャック』第34話「目撃者」
少年チャンピオン・コミックス
著者:手塚治虫
発行所:株式会社秋田書店
昭和50年3月30日初版発行

子供の頃に夢中で読んだ『ブラックジャック』のコミックスは、今も大切にしています。
あたりまえのように過ごしている日常のなかで、ハッとするような景色をみると、いつも第34話に登場する女性店員を思いだすのです。

私たちが何気に過ごす日常は、実は、一瞬一瞬が、奇跡のようなプレゼントなのかもしれません。