ゲルニカ『復興の唄』に登場する「晴れた空には鳩が飛ぶ」という歌詞を聴くとき、私はかつてGHQ本部が置かれていた有楽町界隈を想像します。
有楽町や日比谷公園内にあった新聞社の屋上には、戦前から東京タワーが完成した翌年の 1959年まで、伝書鳩の飼育小屋が設置されていました。
飼育員は、鳩が迷子になることや猛禽類に襲われることを想定し、”5羽1組”で飛ばしていたそうです。
街中が近代化されてゆくなか、深刻な鳩の糞害の記録も残っています。
糞害が多く報告されている高架線ガード下では、傷痍軍人・娼婦・賭博師・辻占い師などが、生きるためにあらゆる手段を使って生計を立ていました。
私は、戦後復興の「光と闇」を伝書鳩にみるようです。
近代化とは、情報を司ることなのかもしれません。
そして、伝書鳩〜電報〜電話〜ポケベル〜携帯電話〜スマホへと、情報を伝える手段はわずか70年ほどの間に大きく進化しました。
情報を伝える手段が進歩したため、私たちは、「約束されたもの」に集中してエネルギーを注ぐことができるようになりました。
しかし、報われると約束されていないものにエネルギーを注ぎ続ける”人の想い”が、未来をつくってきました。
それは、ビジネスでも、恋愛でも、教育でも、芸術でも、あらゆるものにあてはまります。
ゲルニカ『復興の唄』は、”人の想い”が未来をつくることを改めて気づかせてくれます。
報われると約束されていないものに、無条件でエネルギーを注ぐこと。その情熱はただ愛に他ならないと、そう思える今日の晴れた空です。
ゲルニカ:上野耕路・戸川純・太田蛍一『改造への躍動』1982.06.21
アルファレコード:YENレーベル
Executive Producers:細野晴臣・高橋幸宏
東京タワー 正式名称:日本電波塔 1958.12.23竣工