『毎日、一日だけ大事に生きよう』

静かに語りかけるような歌詞の一節に、救われたような気持ちになりました。

『SILENT KILLA JOINT』のジャンルはヒップホップ。
今まで、私の全く知らない世界の音楽でした。

『SILENT KILLA JOINT』: SKJ氏は、過去に女の子を助けるため暴力に訴えるしか方法がなく、それを行使し、懲役刑を科せられことをカミングアウトされています。

「剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力」

罪の重さを秤で測る
「正義」とは何なのか?
自問自答しながら、やはり「女の子を助けた行為は間違っていなかった」と、SKJ氏は答えを導きだされています。

「誰かが傷付くのを見過ごすより、自分がダメージを受ける」選択をされた。
「自分の正義に絶望しない」選択をされた。

しかし、懲役刑を科せられたことは、出所後の人生にも影響を及ぼしました。
抗えない法律と、逆らえない世間の目。
罪を償い、更生しようとする人を差別する人。
ハンディを乗り越え、社会に復帰しようとする人を嗤う人。
ペナルティーを背負った人を、面白おかしく噂する人。
窮地に陥った人に、さらに追い討ちをかける人。
社会的制裁の大義名分で、家族まで誹謗中傷する人。

ご家族もいるSKJ氏は、生きることそのものが苦しかった時期を体感され、それでも「音楽に救われた」と語られています。

私は、SKJ氏が決してお綺麗事を言っているのではなく、咎を背負い、死の淵を覗き込んだ人にしか見えない心情を、そのままに表現されていると感じます。

『毎日、一日だけ大事に生きよう』

“とりあえず、今日一日だけは生きてみよう”
というニュアンスは
絶望の日々の中でも
今日一日をなんとか無事に過ごせれば
明日につながると
語りかけてくれているようです。

生きることのほうが辛い。
それでも生きてみようと思える。
『SILENT KILLA JOINT』の作品は
誰もが理解しあえる
誰も否定されない世界というものが困難であると知ってはじめて、「誰かを理解しよう」とする心が芽生えることを教えてくれます。

54歳になって
若い世代の方から
初めて教えてもらえることもあるから、人生って面白いと思えるし、今日一日を大事にしてみようと思うのです。

 

Mousse E : SILENT KILLA JOINT『Refuse not to be cool』2019.01.14