『わたしは慎吾』の続編が展示された
ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』では、会場に映画『禁じられた遊び』〜「愛のロマンス」が流れていました。

私達の人生に散りばめられた
ランダムに存在するものの中には
禁じられた選択
と審判されるものがあります。

禁じられた選択の象徴として
キリスト教圏では
アダムとエバが挙げられます。

旧約聖書・創世記第一章2-3
神は自分の姿に似せて創造した男性・アダムを東方にあるエデンの園に置き、アダムの肋骨から創った女性・エバを連れ添わせました。

神は、ふたりに
善悪を知る『知恵の木』と
永遠の命を司る『生命の木』を
守らせ
「その木の実を取って食べてはならない」と
厳命します。

しかし
サタンの化身である蛇が
「その実を食べると目が開け、神のように善悪を知ることができる」とエバをそそのかします。
エバは『知恵の木』の実を食べ、アダムにも食べさせます。
すると、途端にふたりの目は開け、自分達が裸であることに羞恥心を覚え、イチジクの葉を綴りあわせて身体を覆いました。

ふたりは
神の怒りに触れ
楽園(エデンの園)から追放されてしまいます。

神に背いて罪を負ったふたりは
額に汗して働く存在
苦しみ子を産み育てる存在になります。

エバが
禁じられた選択をしたことは
罪と審判され
それ以降のふたりが残す子孫たちも
神の救いと
悔い改めが必要になったという
キリスト教における人間の「原罪」の思想となり
今日まで受け継がれてきました。

しかし
楽園で
禁じられたものを犯す選択が
未来に繋がる可能性になっているものもあります。

羞恥心は
身だしなみ
衛生
衣服・服装・衣装
制服
整髪
化粧
マナー
礼節
規律
しきたりなど
文化的なものの発展に貢献しました。

労働は
時間
労力
アイデア
設計
製作などを合理的に行うため
道具
機械
電子計算機
ロボット
AIの開発にまでたどり着きました。

出産・子育ては
医療
薬品
福祉
保育
教育
道徳
情操
芸術などの
各分野の専門エキスパートを養成する発想に至りました。

それらを守るため
法律・司法
検察・警察
軍隊・防衛
金融・保険などのシステムが確立しました。

これらは全て
アダムとエバの
禁じられた選択の功績です。

私達は
子供の頃から今日に至るまで
いわゆる
禁じられた選択をしてきたことがあるのかもしれません。

私が選んだタロットこそ
占術・まじない・魔術を使うことを禁止され、それを操る者は魔女裁判にかけられ死刑が執行された時代がありました。

ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』で
さとるとまりんの物語を拝読して
禁じられたものの中に
未来に繋がる可能性を見い出せるなら
リスクを負いながらでも
それを選ぶ勇気は
人間だけに与えられた才能ではないかと感じました。

そこに功績があるのかどうかはわかりません。
しかし
それでも私は選び続けるでしょう。
不明瞭な未来に
無条件でエネルギーを注ぎ続けるでしょう。

私の
禁じられた選択の象徴は
さとるとまりん。
ふたりは40年の時間を経て
私の生涯にわたり
影響を与え続けてくれるのです。

 

『楳図かずお大美術展』
東京シティビュー(六本木ヒルズ 森タワー52階)
ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』
2022128日(金)〜325日(金)
展覧会公式サイト :https://umezz-art.jp/

『わたしは慎吾』2018年アングレーム国際漫画祭【遺産賞】受賞
ビッグコミック・スピリッツ1982.04.30日号-1986.09.01日号連載・著者:楳図かずお・発行所:株式会社小学館
第一巻2000.03.10初版第1刷発行第七巻2000.06.10初版第1刷発行

映画『禁じられた遊び』(Jeux interdits 1952年公開

The BIBLE』共同訳聖書実行委員会・発行:日本聖書協会