『解釈学』:hermeneutics
聖書の正しい理解の必要から発達し、文献からその内容を正確に読み取るための技術。

明東館のタロットは
『ウエイト版』タロットを創作された
アーサー・エドワード・ウェイト博士の
The pictorial key to the Tarot
をもとにご提供しています。

『ウェイト版』タロットは
札に描かれた「絵柄の象徴」=【普遍言語】と捉え、それらの細密な組み合わせで、ひとつの世界観が構築されています。

「絵柄の象徴」とは
例えば『ウェイト版』タロットには、ペリカンが描かれている札があります。
遠景に描かれており、一見すると鳥の種類は判別できないほどですが
「ペリカンの象徴」=【自己犠牲・見返りを求めない愛】という強いメッセージを発信しています。
それは、(天候不順等の外的環境に影響を受け)ペリカンの親鳥が雛鳥に充分な餌を運んでやれないとき、雛鳥を生かすため、親鳥は自らの胸をくちばしで刺し、流れ出た血を雛に与えることから起因しています。

このように、タロットを読むとき
創作者が、「ペリカンという象徴にどのようなメッセージ性を持たせているのか?」読み手の解釈技術が必要となってきます。
タロットが『解釈学』であると定義されている所以です。

タロットは、開示された札をもとに、いくつかある選択肢の中からひとつを選び、未来を望むものに変えてゆくための道具として存在します。
その選択に迷ったとき
タロットは
前に進むのか
撤退するのか
新たな道を作るのか
質問者に「どうありたいか?」問いかけ導いてくれます。

問いかけの目的は
『タロットを通じて
己の人生を見つめることで
精神的な光明が開ける』
ことにあります。

明東館は「吉凶禍福」を当てる占いではなく
タロット創作者の『解釈学』の理念を継承し、タロットからのメッセージをお伝えしています。
お客様にメッセージを受け取っていただき、ご自身に向き合う機会を設け、心を養っていただくことを目的にしています。

しかし
近年、明東館でご提供したメッセージを「ネットで調べたら意味が違った」とのご指摘を承ることがございます。

「意味が違った」理由のひとつとして
『ウエイト版』タロットの創作者ウェイト博士と犬猿の仲だった、アイレスター・クロウリー氏が創作された『トート・タロット』の存在が挙げられます。

アイレスター・クロウリー氏も当初は、ウェイト博士の所属する『黄金の夜明け団』のメンバーでしたが、団員としては問題児で、独自のカルト教団を創設し、非人道的な教義や科学的根拠のない病の治療で、事故の犠牲となる信徒を頻出させました。

アイレスター・クロウリー氏側近の証言により『トート・タロット』は、『ウェイト版』を改修したデッキだと通説になっています。
伝統を踏襲しながら、『ウェイト版』に対抗して作られた異色作とも言えます。
あえて『ウェイト版』からかけ離れたイメージで作製されており、今日においては、このタイプのデッキも数多く創出されています。
ネット上の発信者が、どのような根拠からタロットを読んでいるのか明確な説明がなされておらず、受信者に混乱を招かせているのではと拝察します。

もうひとつの考えられる理由は、ネット上の発信者が「絵柄の象徴」を無視して、いわゆるインスピレーションで読んでいる場合です。
タロットは「インスピレーションで読んでいい」という意見もありますが、思考力の放棄はタロット創作者への冒涜であると私は考えます。
あるいは『解釈学』そのものを理解されていない、理解しようとされていないと言わざるを得ません。
『ウェイト版』と、その他のデッキ(ヴィスコンティ版・キャリーイエールパック版・エステンシ版・マンテーニャ版・マルセイユ版・トートタロット版・新興版など)を混同されて提供されているのであれば、その旨を説明して然るべきだと私は考えます。

明東館では『ウェイト版』タロットのみを使用しています。
『解釈学』を理念とされたウエイト博士の意志を尊重し、心を養う道具として、これからもタロットに向き合ってゆく所存です。

 

『タロットの歴史』著者:井上教子・発行所:株式会社山川出版社2014.11.3011刷発行
『タロット解釈実践事典』著者:井上教子・発行所:株式会社国書刊行会2000.08.24・第1刷発行