「私、今日ここに来る前に決めてきたことがあるんです」

Aさんは、そう言いながらスマホを取り出し、あるSNSをアンインストールすることを宣言されました。

そして
「みていてください」と
意を決したように、私の前でSNSのアンインストールのパネルをタッチされました。
その間、数秒の出来事でした。

Aさんが初めて明東館へご来館くださったときのご相談は、「彼のSNS をフォローしている女の子のコメントを閲覧するたびに、嫉妬して疑心暗鬼になって苦しくなる」というものでした。

せっかく彼とデートしていても
フォロワーのことを問いつめてしまったり、「その子とは何でもないよ」と言質を取ろうとして、ふたりで過ごす時間をギスギスさせて、台無しにしてしまったこともあるそうです。
彼がフォロワーに思わせぶりな態度を取っているからと、彼を責める気持ちも芽生えていたそうです。
彼のスマホをチェックする制裁を加えたいと思うこともあったそうです。

しかしAさんは、そうはしなかった。
彼との関係を悪化させているのはSNSのフォロワーではなく、自分の心の中にある迷いだと気付かれたのです。

「彼は、フォロワーの子をどう思っているのかな?」
「彼は、私のことがほんとうに好きなのかな?」
「彼は、フォロワーの子に恋人の私を隠してるのかな?」
そういった迷いの感情が次々とわいてくるのは、結局、自分が彼を信じていなかったことが原因だと理解されたのです。
その迷いの感情をコントロールするためには「SNS を見ない」ことが今の自分には必要だと決意し、この度アンインストールを実行するに至られたのです。

明東館の役割は、タロットを通じて
お客様の『迷い』に気付いていただくことです。
『迷い』がどこから生まれているのかを、お客様と一緒にみてゆきます。
Aさんの場合、フォロワーの存在が『迷い』を生み、彼を信じることができないという怒りが派生しました。

Aさんの「私は、あなたを信じられません」という怒りの態度は、彼にとって「自分の力でAさんを笑顔にすることができない」という自尊心(プライド)が削がれた状態です。
それならば
彼の自尊心が満たされる状態にするためにはどうすればいいか?
それがAさんが持ち帰られた課題でした。

Aさんは数ヶ月の間、真剣に考えられました。
◆彼の自尊心を満たすには、自分が笑顔でいること。
◆自分が笑顔になるためには、迷いをとり除くことが必要。
◆迷いをとり除くためには、フォロワーのコメントを見ないこと。
SNSがスマホ内にあると、どうしてもフォロワーのチェックしてしまうのでアンインストールを決意。

迷いをとり除くことができたら
「私が、あなたを信じているのだから」
と、自分を主軸に考えることができるようになれます。
自分を主軸で考えることができるようになったら、彼を責める前に
「自分がそうしたいから、する」という発想になってきます。

そうなれば、Aさんは彼の不誠実さを嘆くのではなく
「私は、別れたくない」
「あなたが不誠実でも、私は誠実でいます」
という態度になってきます。

そういった誠実なAさんの態度を見ても、なお彼がAさんを粗末に扱うようであれば、彼は恋人として相応しくないと審判できます。
そのときにはAさんは自分の意思で「自分がそうしたいから」別れを選ぶこともできるでしょう。

Aさんの、タロットに真摯に向き合ってくださった姿に私は胸を打たれます。
日常となっていた大切なSNS
アンインストールするまで
どれほど悩まれて
どれほど勇気が必要だったでしょうか。

いつか必ずAさんは、その勇気を持てた自分を誇れる日がくる。
自分の意思で決めたことは、ほかでもない、Aさん自身が自分を信じることができた証です。

きっとAさんはこれから幸せな恋愛をされる。
SNS という大切なツールと引き換えに、もっと大切な恋愛のツールを手に入れたのですから。