「まだかよ。遅えな、早く奪えよ」
そう仰るのは
実業家・堀江貴文氏。

日々、進化するテクノロジーの恩恵を授かりながら、「AI が人間の仕事を奪っていく時代」だと嘆く『AI 脅威論』に対して
「僕は早く奪っていってくれと思っています」に続くお言葉です。

2020年(令和2年)10月1日
東京証券取引所(東証)システム障害の発生により、株価情報を配信できなくなり、全銘柄で終日取り引きを停止する異例の措置が取られました。
しかし
その日の夕方に記者会見に臨んだ東証側のCIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー・最高情報責任者)の対応が「近年まれにみる整然とした説明」と好評を博し、見通しどおり、わずか1日で復旧作業が終了しました。
市場にも、一般の消費者にも大きな影響を与えることなく混乱を回避できたのは、日本の高い水準の『テクノロジー技術』と『人』(東証システム関係者・富士通関係者)が両輪となっているからだと感じました。

『テクノロジー技術』というキーワードで、私がいつも思い出すのは、OL時代の事務処理事情です。
私がOLとして就職した昭和時代の終わり頃は、新人として入社したタイミングで
「電卓」か
「そろばん」か
今後、どちらの道具を使って業務を行うか?
選択するよう求められた時代でした。

「電卓」か「そろばん」どちらかひとつを選択するよう求められたのは
「両方とも使える器用さ」ではなく
「ひとつの技術を特化させる」ことで、迅速な事務処理を行えるよう期待されていたからです。

昭和時代の迅速な事務処理能力とは具体的にどんなことだったか?
それを知れば
『AI 脅威論』が支持される「人間味」という理由に疑問がわいてきます。

『AI 脅威論』を、もしあなたが支持するなら
例えば、あなたが
【絶対に、ある時間までに送金しなくてはならないお金】があったとき
・スマホ・ATM・コンビニで振り込みができない
・スマホ・他行のATM・コンビニで出金できない
・豪雨の中だろうと銀行に行くしかない
・第2・第4土曜日は休店日で焦る
・平日の営業時間は09:00-15:00で、自分も勤務時間中
・伝票を書いて窓口の行員に預ける(書き損じる可能性あり)
・店舗には他のお客様が50人いて、あなたは51番目
・しかも、後方の新入行員が「電卓」も「そろばん」もおぼつかない
・通帳の繰り越しは、手書きで、しかも字が汚い
・小切手帳の印刷も製本も店内で手作り
・誰かが通帳と印鑑を勝手に持ち出し、全額引き出していた
・免許証や保険証で、明らかに本人だと証明できるのに、印鑑が違うので取り扱いできないと返却される

このようなことがあっても

「人間味があっていいですね」

「うちの会社の手形は、今日落ちなくても大丈夫ですよ」

「電話・電気・ガス・水道を止められても、まあ、仕方ないですよね」

と余裕が持てるかどうかということです。

さらに、当時の業務を思い返すと、印鑑を照合する業務が、果てしなく終わる気がしなかったことが印象的です。
「もう、いっそ、こっそりトレーシングペーパーに印鑑の型をとって照合したい」と思うほど手間も時間もかかる作業で、楳図かずお先生の『わたしは慎吾』の”機械”モンローになりたいと妄想したりしたものです。

堀江貴文氏は
「反テクノロジー主義のほうがむしろ、反人間主義。
人間に”機械役”をやらせていて平気なんだから」だと、はっきりと仰ってくださっています。

本当にこのようなことがあった時代に戻りたいか?と問われて「イエス」と言える余裕のある人が、一体どれほどいるか?ということです。

『AI』の目指すところは、私は人の幸せのためだと信じています。
AIに「時間の余裕」を
生みだしてもらうことが
「心の余裕」に繋がる。
「心の余裕」は、笑顔に繋がる。
魔術から派生した
『錬金術』の発想が生まれた16世紀の時代から
天文学
物理学
化学
地質学
医学
薬学
農学
神智学が
学問として独立し
現代の『AI』に継承されたことを想うとき
「魔術とは究極のテクノロジーである」という考えかたを、私は信じるのです。

堀江貴文氏は
「リモート授業」
「オンライン授業」
「在宅ワーク」
「リモート会議」
という発想がなかった頃から、不登校・ひきこもり・身体に障害を持った子供たちの学ぶ場所が必要だと、『ゼロ高等学院』をつくられました。
子供たちの身体と心をケアできるシステムが普及することを願い、登校する・しない・できない子供たちが等しく教育を受ける機会を設けておられます。
そこには、ハンディを持った人達が、社会と繋がるシステムこそが『AI』であるという想いが根底にあります。

2019年(令和元年)
文部科学省が発表した義務教育中の不登校生徒数は、181,272人。

「まだかよ。遅えな、早く奪えよ」

堀江貴文氏の
お言葉こそ
「人間味」があり
私は胸を打たれるのです。

『AI』が
あなたの幸せのためにあること。
『テクノロジー技術』は
誰かの幸せのためにあること。

奇しくも
東証システム障害の迅速な復旧が、それに気づかせてくれました。
わずか1日で復旧作業が終了できる技術が存在するなら、その技術はこれから広く人を幸せにできるとも、私は信じたいのです。

 

写真:2020年(令和2年)10月1日・産経新聞
『バカとつき合うな』著者:堀江貴文・発行所:株式会社 徳間書店 2018.10.31初刷
『わたしは真悟』著者:楳図かずお・発行所:株式会社 小学館