不登校などで十分な教育を受けないまま中学校を卒業した『形式卒業者』の夜間中学入学はかつては認められていませんでした。
しかし、不登校生の増加が続く状況などを受け、文部科学省(文科省)は方針を転換。
27年7月に形式卒業者の入学を認める通知を出し、28年12月には法的な支えとなる教育機会確保法が成立しました。

文科省の平成29年度の調査によると、年間30日以上欠席する不登校の小中学生は144,031人にのぼり、過去最多を更新しました。
うち約6割が90日以上欠席していると報告されています。

夜間中学には「学び直し」の場としての役割が期待され、文科省によると29年7月1日現在、全国8都道府県に計に31校ある夜間中学校で 計1,660人の生徒と73人の形式卒業者が学んでいます。

小学校2年生から不登校となったOさん(32歳)は、尼崎市立成良中学校琴城分校が初めて受入れる不登校経験者でした。
この学校では 10代から80代までの幅広い年齢層の生徒が41人在籍されています。
Oさんは、かつて居場所がなかった学校に馴染めるのか不安があったそうですが、
「学びたい」という気持ちが本物だと伝わると、他の生徒達との距離も一気に縮まったそうです。

年齢も国籍も異なる生徒達は、抱える背景も多様で複雑で、Oさんの全く知らない世界を生きてこられました。
戦争で家族を失い中国人の養父に育てられた残留孤児。
壮絶な差別を体験した在日韓国人。
親の仕事や結婚などで来日した外国人や、その家族の新渡日外国人(ニューカマー)。
学校生活を通じ、Oさんにそれぞれの人生を語ってくださったそうです。

「夜間中学では数学や英語や社会など、昼の中学と同じように教科の勉強をしますが、仲間の人生に触れることで
『生きること』についても学んでいると思うのです」
嫌いだった学校が好きになり
つまらなかった勉強が楽しくなり
自分に自信がなくて一歩引いていたOさんが、熱心に人と関われるようになったそうです。

「学びたいという気持ちがあれば、人生はいつでもやり直しができる。
20代でも、80代でも。
琴城分校で私の第二の人生が始まりました」
いずれ高校にも進学したいと語るOさんは
「私のように夜間中学を必要としている人は大勢いると思う。
ひとりでも多くの人に夜間中学に出会ってほしい」
と、語られています。

文科省は、教育機会確保法に基づき、各都道府県に最低一校の設置を促しており、今後開校に向けた動きが加速することが期待されます。
31年4月に開校する埼玉県川口市と千葉県松戸市の他に、全国6カ所で新設に向けた動きがあることが産経新聞の取材で明らかになりました。

【 産経新聞 :平成31年(2019年)3月16日号・連載「夜間中学はいま」より抜粋 】

明るい話題のニュースです。
ひとことだけ捕捉させていただくなら
「無理してコミュニケーションをうまく取ろうとしなくても大丈夫だよ」
と、いうことです。
この記事を
「コミュニケーションが取れるようになった」ことを推奨しているように感じて、苦しくなっている人がいるかもしれません。
この夜間中学校の特集の要約は
「学びたい意欲が、結果として人間関係を育んだ」ということ。
「意欲がわくまでの個人差は10代から80代まで幅がありますよ」ということです。

不登校で苦しんでいる子供達。
いじめなどで教育の機会を奪われた、かつての子供達が
人生はいつでもやり直しができると
『信じられると思える』環境を提供する場所。
その中の選択肢のひとつとして
夜間中学校の情報を持っておくことが
誰かの救いに繋がるなら幸いです。

 

産経新聞 :平成31年(2019年)3月16日号