『ネットが無い時代は楽でしたか?』

欅坂46の平手友梨奈さん(17歳)が
TOKIOの城島茂 氏(47歳)に
問いかけたお言葉です。

城島氏が17歳の頃は1988年。
携帯電話や
パーソナルコンピューターは、発展途上の段階で
まだ、インターネットは一般に普及していない時代でした。
「待ち合わせ時間に遅れるときには
“駅の伝言板”にメッセージをチョークで書くか、待ち合わせの喫茶店に電話して
ウエイトレスさんに呼び出してもらうしかなかった」
とのエピソードに
本来ならば
『ネットが無い時代は不便でしたか?』

問いかけることが自然に思えます。

しかし、平手さんのお言葉の
『ネットが無い時代は楽でしたか?』からは
「人と簡単に繋がること、切れること」
「匿名性が高い」
「瞬時に情報発信・情報収集ができる」
「グループで共有できる」
これらが
便利ではなく(楽ではなく)苦しいものであるということが伝わってきます。

タロットの諸刃の「剣」は
『言葉・文字・文章』を意味し
使い方によっては
人を殺めることもできると同時に、自身もダメージを受け
また、人を守り 救うこともできるツールと定義されています。
属性は「風」で、風評・拡散をそのまま意味します。

平手さんは、その諸刃の剣の性質を
表現者として体感し、取得し
慎重に丁寧に『言葉・文字・文章』と対峙しておられるように拝察いたします。

会話形式でタイムリーにSNSでやり取りしている際に
「対面・電話・手紙では絶対に言わないであろう言葉を使ってしまう」
というケースは数多く報告されています。
便利さという恩恵と引き換えに
言葉を希薄させ
相手を思いやる想像力を働かせるための
充分な時間が持てないことも理由だと思われます。

私は 決して、不便さを推奨しているわけではなく
例えば
◆明治29年(1896年)デルビル磁石式電話機の通話料金は
5分で45銭
労働者の1日の報酬とほぼ同額でした。
◆共同通信社では 昭和34年(1959年)まで
20羽の伝書鳩が活躍していましたが、迷子や猛禽類に襲われることを想定して 5羽1組で飛ばしていました。
現在でも
◆電報は1文字 17.6円
◆郵便葉書は1枚 62円
言葉を伝えることが
どれだけ貴重なことであるかを 具現化している数字を通して
忘れないでおきたいのです。

逆説的に
「あなたが今、打っているLINEを
わざわざ電報や郵便で送りたいか?」
と、置き換えれば
誰かを傷付けることも
自分を傷付けることも
劇的に少なくなるのではないでしょうか。

『言葉・文字・文章』を推敲に推敲を重ねて
研ぎ澄ます様は
まさに剣の手入れをしている姿と重なります。
私も 諸刃の剣の性質に対し
畏怖の念と尊敬を忘れず
常に謙虚な気持ちで向き合ってゆきたいです。

 

(写真:産経新聞2017年9月8日号・永井荷風 創作ノート)