「手をかざして病気を治すという人がいるのですが、70万円を請求されました。
本当に治りますか?」
おそらく、これは
1778年頃、パリで大流行した
フランツ・アントン・メスマー氏の
「メスマー磁気治療」から派生したものと思われます。
「メスマー磁気治療」のメスメリズムとは
宇宙には磁気気体が充満しており、病気はこの流体の流れに支障が生じることによって起こると考えられていました。
この説によれば、磁気流体を正常に戻すことにより
病気が回復するというものでした。
(挿絵 参照)
磁気治療が果たして科学的な裏付けを持つ医学的治療なのか
詐欺まがいの治療なのかをめぐって議論が生まれ
この問題を解決するために
1784年に
アントワーヌ・ラヴォアジエ や ベンジャミン・フランクリンなど
科学者を含むフランス王立委員会が設置されました。
協議の結果「科学的根拠がない」と、
王立委員会は磁気治療の効果を否定する結論を出しました。
しかし、メスメリズムは人間の内的な力と結びつけられ
催眠術(ヒプノティズム)として生き残り
19世紀にも影響を及ぼすことになりました。
これは
正統派医学もまだ発展段階にあり
未知の病気に対しては 昔ながらの
信仰治療や魔術治療に
頼らざるを得ないという
時代の背景があったからと考えられます。
21世紀の現代において
このような治療法を期待する人がいること
それを利用して報酬を要求しようとする人がいること
愚かだと言うのは簡単です。
なぜ愚かなことを
人は繰り返すのか?
そこに頼らざるを得ないものがあるならば
不可視の世界を取り扱うならば
ひとりで判断しないで
ご家族でも、ご友人でも、お医者さまでも
善意の第三者にご相談されることをお勧めいたします。
(参考文献:吉村正和・フリーメイソン・河出書房新社)
「第3章・神秘主義的フリーメイソン」
「挿絵:メスマーの磁気流体による治療」