僕はちょっとしか映らないけど、本当は高松秀郎さんとアップでバーンと出てくるシーンがあったんですよ。
満州国皇帝の即位式で、花をムシャムシャ食べちゃう皇后を諫めようと、溥儀さんが「ちょっと失礼」と日本軍の前を通り過ぎる一瞬。
僕たちの見送る横顔をグッとカメラで撮られてる場面が、本当は入るはずだったのに…。

でも、その時の顔といったら『オレたちひょうきん族スペシャル』の、そのまんま東とタケちゃんマンそっくり。
『ラストエンペラー』じゃなくて、『ラスト目黒エンペラー』になっちゃうから、カットされて良かったのかもしれない。挿入されていたら、せっかくのいいシーンが爆笑ものになっちゃうもんね(笑)

 そんなふうに長春のロケには4日間ほど参加したけど、向こうへ行ってビックリ!
とても豪華なイブニングドレスを着たエキストラの女性が、ファッションとかけ離れたような毛糸のパンツをはいているんだもんね。
おまけに、そのことを全然気にしない立ち居振る舞いはするし、もの凄い顔をして男の目の前で大アクビはするし。

あちらの人は朝が早く、午前5〜6時に起きて、朝方にひと仕事を済ませてしまうんです。午後からはお喋りや編物なんかをして働かない習慣があるみたい。
で、あのシーンは200〜300人ものエキストラを動員して、長春にある本物のお城で撮影したけど、夕方まで延びると大変!皆、衣裳を着たままでゴロゴロ寝ちゃうから、凄まじい光景になるんです。まるで爆弾でも落ちたんじゃないかと思うくらい不気味なの(笑)

 もともと僕はビデオクリップを作ったり、ビデオアートをやっているでしょ?そうした経歴を一昨年夏のオーディションで製作者のジェレミー・トーマスに話し「お金をかけて作る本篇の現場を見たい」って申し出たら、日本人通訳役をくれたんです。だけど、実際の現場を見ると、映画の見方って全然変わっちゃうから、オカシイよね(笑)

音楽家:立花 ハジメ
『THE LAST EMPEROR』:
映画『ラストエンペラー』
1988年(昭和63年)1月23日 日本公開
パンフレット発行同日
発行承認/松竹富士株式会社
編集・発行/松竹株式会社事業部

【スタッフ】
製作:ジェレミー・トーマス
監督・脚本:ベルナルド・ベルトリッチ
音楽:坂本龍一/デビッド・バーン/スー・ソン
アレンジ・オーケストレーション:上野耕路

【キャスト】
溥儀:ジョン・ローン
甘粕正彦大尉:坂本龍一
日本人通訳:立花ハジメ

第60回アカデミー賞:作品賞・監督賞・撮影証・脚色賞・編集賞・録音賞・衣裳デザイン賞・美術賞・作曲賞 受賞
(1988年4月11日)

第45回ゴールデングローブ賞:ドラマ部門作品紹介・監督賞・脚本翔・作曲賞 受賞(1988年1月23日)