「YouTubeのタロット占いは当たりますか?」
この数年で、このようなご質問をいただく機会が大変多くなりました。
私が、お答えできるのは
「あなたが、YouTubeチャンネル登録・高評価をして差し上げることで、そのYouTuberさんの利益になるなら、効力は発生するかもしれません」
ということだけです。
つまり、報酬が発生しないものは、占いに限らず「責任が発生しない」ということです。
もっと言えば、無料で占ってもらったものは「効力を発揮しない」と、私は考えます。
例えば、家を建てるとき
「全て無料で、設計・建築してもらった家に住めますか?」ということです。
雨漏りがしようが
床が抜けようが
漏電しようが
排水ができなくなっても
クレームは言えません。
「家」という効力を発揮できていないうえ、トラブルに見舞われる物件を、「あなたが無料でもほしいかどうか?」ということです。
「それでは
雑誌や新聞に掲載されている
『今月の占い』『今日の占い』はいかがでしょうか?」
出版社や新聞社が、占い師さんに報酬を支払っているのですから、効力はあります。
本屋さんでの立読みや
理容院で偶然に開いた新聞で
(集客という意味で、いずれ本屋さんや理容院の利益につながる可能性があるので)占いに興味を持っていただけることも大歓迎ですが、できれば雑誌や新聞を「あなたが購入する」状態が望ましいです。
厳しいことお伝えしていますが
私自身、タロットを読み始めた頃は
「誰かを幸せにできるなら、報酬はいらない」と”善意”で考えていました。
しかし
タロットを深く掘り下げてゆくうちに
朴筮(ぼくぜい)
お呪い(おまじない)
黒魔術
白魔術
など、”不可視の領域”(オカルト)についての学びが必要になってきました。
“不可視の領域”を操る人物として印象深いのは、横溝正史『八つ墓村』に登場する「濃茶の尼」(こいちゃのあま)の存在が挙げられます。
濃茶の尼は、不遇な生い立ちで、俗世から離れ、予言めいたものを告げる巫女(みこ)のような生業をしています。
濃茶の尼は、村人が望んでいない状態にもかかわらず、一方的に「予言」を告げてまわります。
濃茶の尼は「祟り」(たたり)という、反証できないキーワードを使い
不吉なもの
個人を誹謗中傷するもの
避難勧告など
排除すべきものを羅列し
村人の不安を煽り
皆んなから敬遠されるようになります。
濃茶の尼からすれば
「警告」
「アドバイス」を告げて
村人を危機から回避させようと
“善意”からの行動だったのですが。
このように、”不可視の領域”では
“善意”であっても
一方的に「予言」を告げてまわることは、御法度です。
受け取る側のコンディションが整っていないときに、責任の伴わない「警告」「アドバイス」をされてもダメージのほうが大きくなるだけです。
それを理解してからは
私は、決して無報酬でタロットを読まなくなりました。
そして何よりも
「誰かを幸せにできる」とは思い上がりで
まず、自分の「幸せの定義」を知る必要があることに気付いたのです。
自分の幸せが何であるかを知るためには
価値観を変えたり
固定概念を壊したり
反応しない精神力を鍛えたり
コンディションを読んだり
修行のような自助努力が求められたのです。
そう言った意味では、「幸せの定義」を探求されていない占い師さんが告げるメッセージに、説得力があるかどうかも問われます。
古来よりタロットは対面で行われ、鑑定師は相談者のコンディションを、微に入り細に入り読み取る技術が必要でした。
しかし、SNSの発展で、身元を明かさず、簡単に「予言」を告げることができる時代になり隔世の感を覚えます。
「濃茶の尼」は架空の人物ですが、あなたが占ってもらったYouTuberさんやInstagrammerさんは、実在する人物ですか?
SNSで一方的に占いを発信するシステムに、私は現代の「濃茶の尼」をみるようです。
占いは、現代ではエンターテイメントとしての側面を持っているのも確かです。
あなたが“不可視の領域”という理を踏まえたうえで、YouTubeやInstagramの(いわゆる)タロット占いを楽しんで、上手につきあってゆかれるなら、それは由だと思います。
『八つ墓村』著者:横溝正史・発行者:堀内大示・発行所:株式会社KADOKAWA (1971年)昭和46年4月30日初版発行
『図説・近代魔術』著者:吉村正和・発行:河出書房新社 2013.09.30初版発行
『フリーメイソン』著者:吉村正和・発行:河出書房新社 2010.08.30初版発行