高橋ユキヒロ 氏の デビューアルバム
『 Saravah!』が
今秋、ソロデビュー40周年を記念して、当時のマルチテープに 新たにミックスヴォーカルを録音し『 Saravah! Saravah!』として蘇りました。

『 Saravah!』は
私が38年前の 中学2年生(14歳)の時に購入した LPレコードです。

14歳の少女の耳に聴こえていた
歌が
メロディが
成熟した大人への憧れと
未熟な心情を
鮮明に蘇らせてくれます。

かつて「うまく伝えられなかった」想いがあったからこそ
伝える言葉を模索し続け
今日に至ったのだな、と 回想しています。

言葉を模索し続ける人生で、タロットに出会い
タロットの
「図柄を言語に翻訳して提供する」ことに
魅せられ
虜になり
忠実にあろうとするあまり
言葉・文字・文章の絶対的な力を信奉し
畏れ
私は、一点のミスも犯してはならない
「取り扱い説明書」のようなものを
日常にも求めるようになっていました。

「アップルコンピュータ社の経営理念を理解できなければ、iPhone を使う資格がないのではないか?」

「坂本龍一 氏の使っているピアノの機種を知らなければ、音を楽しめないのではないか?」

「サンドイッチを購入する店を変更する理由は何なのか?」

「恋人たちが、駅のホームまで見送りにくるのは
電車のドアが強制的に閉まり
物理的に離されなければ
別れられないのではないか?」

とまで
やや強迫的に説明を求めすぎ
がんじがらめになって
もはや、私の言葉が
どこにあるのかさえわからないスパイラルに陥っていました。

しかし
高橋ユキヒロ 氏の
『 Saravah! Saravah!』を聴きながら
未熟な少女が
言葉をうまく伝えられなかった頃と
がんじがらめの大人が
言葉をうまく伝えられない今と
そのどちらも
何も、変わりがなかったのだと気付きました。

語彙が増えたとか
形容ができるようになったとか
沈黙はイエスではないことを知ったとか…
大人になって
言葉に関する技術は増えたかもしれないけれど
誰かに 何かを伝える手段は
言葉だけではなかったという
シンプルなこと。

伝える言葉を 模索し続けても
見つからないこともあるということを
38年かけて理解できました。

「うまく伝えられない」という
言葉にならない感情を
紐解いて
「あなたの取り扱い説明書」として言葉にすることが
タロットの役割であるなら
その「あなたの取り扱い説明書」の行間にある
言葉にならない想いを
読み取り
お客様に提供することが私の役割でした。

見つからない言葉もあると知った今
タロットの図柄は
更なる新しいメッセージを運んでくれています。

『 Saravah!』という一枚のアルバムが
言葉を模索する旅の
始まりであり
終わりであるようです。
その終わりの地点は
実は、始まりの地点にあったのだと
そんなことを感じながら
『 Saravah! Saravah!』を
聴いています。

 

高橋ユキヒロ:
『 Saravah!』1978年6月21日発売・キングレコード株式会社
『 Saravah! Saravah!』2018年10月24日発売・日本コロムビア株会社